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概要

システム・サービス名
IoTデータ活用リハビリシステム
内容
リハビリに必要な人材・機器・システムを施設へアウトソーシングし、 IoTデータを収集
対象
沖縄県内のクリニック・介護リハ施設など

ここがResorTech!!

  • アウトソーシングによって地域における介護予防を促進

  • リハビリ施設の導入に必要な初期投資を軽減

  • リハビリ機器からIoTデータを収集して患者の症状を一元管理

高齢化が進む沖縄県では、2025年に65歳以上の人口比率が25%を超え、約4人に1人が65歳以上の高齢者なると予想されています。また、要介護認定者も年々増え続け、約6万人にものぼるといわれています。そのため、要介護になる可能性の高い後期高齢者の割合が高いため、高齢者が支払う介護保険料(月額)が全国1位です。
かつて長寿日本一だった「健康長寿おきなわ」を取り戻すため、要介護認定者の減少が急務といわれています。

こうした介護医療の問題を先進のIT技術で解決に取り組んでいるのが、株式会社沖縄富士通システムエンジニアリングです。同社は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、県内発信の新たなビジネス創出や地域の価値向上を寄与する「地域と共に実現するDX」を目指しています。

同社が開発した「IoTデータ活用リハビリシステム」は、医療機関から大いに注目を集めています。しかし、なぜリハビリのシステムが要介護認定者の減少につながるのでしょうか。システムの開発を手掛けた、株式会社沖縄富士通システムエンジニアリングの町田宗平氏にお話をお伺いしました。

写真:株式会社沖縄富士通システムエンジニアリングの町田宗平氏

リハビリ体制を支援して地域医療の拡充を図る

病気やけがをすると、病院に入院して急性期と呼ばれる治療に専念します。症状によっては日常生活に戻るための回復期間に、しっかりリハビリを行って要介護状態から改善に努めます。しかし、県内では退院後に通う地域のリハビリ施設が限られているのが現状です。

町田氏が調査したところ、県内では約900ある医療機関の内、約200施設程度しかリハビリ科を標榜しておらず、地元でリハビリを受ける環境が整っていないとのことです。そのため、リハビリを要する患者は、退院後にも住み慣れた地域でリハビリを受けることができず、自宅から遠方のリハビリへの通院が億劫になってしまい回復が遅れてしまうケースがあります。一方、地域クリニックに目を向けると地域貢献の一貫としてリハビリの環境を整備したいというニーズは多いそうです。しかし、リハビリ機器などの設備投資による資金面での不安、理学療法士の人材確保、ノウハウの不足などがネックとなり躊躇してしまうことを把握しました。

こうした問題に直面している医療体制の環境整備が必要ということは、沖縄県の地域医療の構想でも認識している課題でもあります。要介護認定者が減少すれば医療費や介護費の削減に結びつき、健康寿命の割合が高くなり、「健康長寿おきなわ」を実現させることにもつながるのです。町田氏は地域医療のリハビリ体制を充実させるため、アウトソーシングに最適なシステム提供にむけて、開発に着手することになります。

初期投資を軽減してリハビリ評価を可視化

町田氏は地域の企業と共創して各地域のクリニックにアウトソーシングする仕組みを提供することに取り組みます。リハビリに必要な療法士の人材、リハビリ機器・ウェアラブル機器、リハビリシステムなどを全てアウトソーシングすることで、クリニックの初期投資の課題をクリアすることができるようになります。そして、同社の技術が最も活かされているのが、患者のリハビリ評価を可視化させるIoTデータの収集です。

従来、患者のリハビリへの対応は問診、触診、視診などを行って回復に向けて最善な処置を行います。しかし、これでは療法士の判断によってリハビリを行うため、担当が変われば患者のリハビリ評価に差が生じてしまいます。一方、「IoTデータ活用リハビリシステム」は患者の筋力、歩行、バランスなどの詳細な項目をデータ化し、リハビリ機器から収集するので、患者のその日のリハビリ効果が正確に分かるようになります。また、リハビリ効果をデータ化することで療法士の間で情報を共有できるようになるため、的確なリハビリを行うことが可能になります。

写真:リハビリ機器からIoTデータを収集

実証実験で着実に実現化に近づく

現在、実際に「IoTデータ活用リハビリシステム」を療法士の方々が使って、どのように活用できるのかという実証実験が始まっています。県内のリハビリアウトソーシング実施企業と連携し、クリニックで20名ほどの患者を対象に行われているとのことです。実際にリハビリの現場で使えるために、「リハビリ機器からのIoTデータの収集」「療法士の評価内容に重み付けしてデータ化」「データに基づいたリハビリ評価」の3点を検証されています。

患者の日常生活のデータは、腕時計やアクセサリー感覚で身につけられるウェアラブル端末のfitbitを使って、リハビリを行った際の心拍数や運動量、歩行、消費カロリーなどを計測し、データ化します。このウェアラブル等のIoTで収集したデータとこれまでのノウハウでの評価(診察記録)をインプットに同社と理学療法士が評価会を実施。
比較・置き換え可能なデータの分析や現場に最適なユーザインターフェースの検討を通して患者IoTデータが患者状態を判断する際の指標値として設定が可能かを検証されています。現場の療法士の方々とシステムを通じてどのようにIoTデータを分かりやすくできるのかを話し合い、画面の見やすさや操作性などのインターフェイスの向上を追求して日々システムをアップデートされています。

写真:現場の声を聞きながら、使いやすいシステム作りを目指す

新たな医療ビジネスを創造する

実証実験で現場のニーズが見えてきた町田氏は、次のフェーズに進むため事業化に向けて動き出しています。収集するIoTデータをさらに活用するために、予約スケジュールの管理やリハビリ実施計画などと連動させてより再現性の高いリハビリシステム、療法士の価値向上に繋がる開発に取り組んでいきます。そして、「健康長寿おきなわ」の復活を掲げて取り組む町田氏が先を見据えるのは全国展開です。

現在、リハビリに特化したサービスですが、今後は寝たきりの介護が必要なフレイルの分野への導入も検討しているそうです。さらには、病院と連携して疾患の予防に役立てられるようなサービスを目指しているとのことでした。近い将来、私たちが病気やけがになった時、日常の生活に戻れるための欠かせないパートナーになる日はそう遠くはないかもしれません。

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