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BEFORE & AFTER

伝票の仕分けや入力は手作業で行い、相当な時間が掛かっている
  • ツールの導入によって入力時間が10分の1に短縮! 空いた時間でお客様と接する時間や、現場の安全管理にもさらに力を注げるようになった
株式会社七和は、沖縄の空港、道路、駐車場、無電柱化に向けた工事など、インフラ整備分野で40年の歴史を誇る建設会社。社員35人で、現在、2024年を目標に「働き方改革」「業務の効率化」「意識改革」に取り組んでいる真っ最中だ。
その一環として、OCR()ツールの「DX Suite(ディーエックス・スイート)」「CLOVA OCR(クローバ・オーシーアール)」、業務プロセスを自動化するRPA()ツールなどを導入して業務の効率化を図り、働き方改革、意識改革を進めようと奮闘している。今回は、改革の中心で指揮を執る製造部試験室長の山崎啓貴(やまざき・ひろき)氏に話を聞いた。
※OCR=Optical Character Recognition/Reader(オプティカル・キャラクター・レコグニション/リーダー)の頭文字を取った略語で、直訳すると「光学的文字認識」。手書き・印刷文字をイメージスキャナーやカメラで読み取り、コンピュータが利用できるデジタル文字コードに変換する技術
※RPA=Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の頭文字を取った略語。コンピュータ上で行っている業務プロセスや作業を、人に代わって自動化する技術

何とかスタッフを休ませたい…まずは伝票の自動読み込みから着手

大きな目標に“意識改革”を掲げたところからIT導入をスタートしました。弊社が属するのは、スタッフの体が資本となる建設業界。「きつい」「汚い」「危険」のいわゆる“3K”、慢性的な人手不足に悩んでいる業界です。

次世代の働き手を増やすため、業界全体で2024年4月の完全週休2日制、勤務上限1日8時間(週40時間)とする労働環境の改善を目指しています。実現できない場合は罰則が課されるので、もう待ったなし。これまでの当たり前が当たり前ではなくなる…まさに、建設業界は意識改革できるかを問われているんです。

弊社も2024年を目標に働き方改革を進めていますが、スタッフに指示を与える経営陣や管理職の意識を変えられるかが大きな課題。特に休日の確保は最優先事項で、スタッフの満足度を上げ、離職率を下げることにもつながると考えています。

まず注目したのが、ルーティーンになっている業務の自動化・効率化。それによって時間に余裕ができればしっかり休みも取れますからね。

2020年6月に、そうしたルーティーン業務の一つだった伝票入力の自動化から検討を始めました。関連会社のネスト沖縄株式会社、アーティサン株式会社の協力も得て、第一歩として導入したのがOCRツール「DX Suite(ディーエックス・スイート)」。専門知識が必要なく誰でも気軽に使える点、安価に導入できる点がポイントでした。

「DX Suite」では、①読み込んだ伝票の仕分け、②CSVデータ化の2段階の作業が可能。①では従来100〜200分かかっていた作業が30分に短縮され、大きな効果を実感できました。

さらなる時間短縮を目指し、新たなOCRツールを導入

ツールなどを導入して業務の効率化に奮闘している山崎啓貴氏

効果を実感する一方で、伝票の種類の識別に時間がかかる問題点が見えてきました。建築資材のような大量の伝票には効果的だったのですが、経費伝票など比較的数が少ないものの場合は手入力が早く、自動入力と手入力を併用する状態になっていたんです。

数の少ない伝票もスピーディーに処理できるソフトを探し、検討した結果、LINE株式会社のOCRツール「CLOVA OCR」を試してみることに。

直感的で分かりやすいUI()だったこと、クラウド型で素早く導入できる点から選んだのですが、異なる伝票や乱雑な文字でも読込スピードが格段に速くなり、本格導入を決めました。

「DX Suite」を経て「CLOVA OCR」を導入したことにより、伝票入力作業は従来の10分の1ほどに短縮できました。二度手間もなくなり、思った以上の業務時間削減効果が得られたと感じています。

※UI=ユーザーインターフェイス(User Interface)の略称。一般的にユーザー(利用者)と製品やサービスとのインターフェース(接点)となる操作画面や操作方法のことを指す

 

小規模事業者等IT導入支援事業を利用してRPAツールを導入!

OCRツール導入と並行して行ったのが、小規模事業者等IT導入支援事業を利用したRPAツールの導入です。伝票入力以外に自動化できるルーティーン業務はないか検討していたところに、タイミング良く支援事業のお話をいただき、相談も兼ねて応募を決めました。

関連会社の担当者と支援事業の専門家のアドバイスを受け、マイクロソフトのRPAツール「Microsoft® Power Apps()」を選びました。プログラミングの知識がなくても簡単にビジネス用アプリケーションを作成できるツールで、普段PowerPointやExcelを使っている人であれば、ちょっとした応用で使える手軽さが導入の決め手でしたね。さまざまなカスタマイズも可能で、デスクワークの簡略化にも効果を発揮してくれそうだと期待しています。

今回は専門家にアドバイスをいただきましたが、時代の変化に柔軟に対応していくには、ITツールを活用できるスタッフを増やすことも必要だと考えるようになりました。今回のIT導入は意識改革であり、組織改革にもつながる第一歩だと捉えています。

※Microsoft® Power Apps=マイクロソフトが提供しているビジネス用のRPAツール

 

「Microsoft® Power Apps」でスピーディーな情報共有とリスクヘッジを実現

「Microsoft® Power Apps」の「Power Automate」で行ったのは、情報共有の自動化です。導入前は共有のための複雑な手順に慣れている営業担当スタッフが毎朝出社しなければなりませんでした。「Power Automate」の導入によって、事務担当スタッフからも簡単に共有できるようになったんです。営業担当スタッフの負担も減り、営業先への直行なども可能になって、お客様と接する時間を多く持てるようになりました。

現在は、「Power Automate」で自動化できるルーティーン業務はないかさらに探っている段階です。改善を試みているのが毎日の工事日報。工事部担当スタッフが手書きの伝票を総務課に提出し、工事の進捗や原価確認のためアプリケーションに打ち込んでいますが、状況把握にどうしてもタイムラグが生じてしまいます。

「Power Automate」を使ったフローを組めば、現場が終わった17:00頃にスマホなどから日報を打ち込むだけでアプリに自動反映されます。17:05には現場の状況把握ができるようになるわけです。業務効率化はもちろん、状況把握のタイムラグがなくなるので、早め早めに手を打てるようになり、リスクヘッジにもつながります。

「Power Automate」は1つ1つの作業をフローとして組むことで簡単に操作が可能

事務作業の時間を、お客様との交流や安全点検に転換

小規模事業者等IT導入支援事業は単なる「Microsoft® Power Apps」の導入資金支援にとどまらず、業務フロー、働き方、スタッフの意識それぞれに大きな変化をもたらしてくれました。

建設業界にはパソコンやIT、デジタルという言葉に苦手意識がある人も少なくありません。プログラム構築のような大掛かりな話ではなく、弊社のような伝票の自動入力など、業務のほんの一部に誰もが使いやすいITツールを導入するだけで、飛躍的に業務の効率化が進むと思います。私もあまりITに詳しい方ではありませんが、今回導入したツールはとても使いやすく、ストレスなく活用できています

まずは、苦手意識のないスタッフがIT導入の必要性を訴え、実際に使用し、「意外と簡単で便利」だと知ることが大切。今後の会社を成長させるためにもITの力は不可欠です。それにはやはりITツールを知ることが重要だと思っています。

人手不足が常態化していた弊社では、機械点検や製品チェックなどに必要最低限の時間しか割けずにいたんです。IT導入で事務作業の効率化を図り、お客様と接する時間や、現場の安全管理にもさらに力を注げるようになりました。故障や事故等で現場の作業ラインを止めないことは、最も大切にすべき重要事項。点検やチェックをより細かく、丁寧に行えるようになったことは、小さいことのようですが、本当に大きなメリットです。

スタッフが夢を抱ける会社を目指し、効率化の歩みを止めない

今後もIT導入による自動化、業務効率化の促進が必要だと考えています。時間に余裕がないと、どうしても上長から課される業務をこなすことで精一杯になってしまいますよね。それでは新しい発想は出てこないし、幸せな未来も描けない。業務を可能な限り自動化することで業務を効率化し、時間を生み出すことが必要です。

そうして作った時間で、スタッフが新たな発想や創造性を持って仕事に臨むことが、会社の成長にもスタッフの幸せにもつながると思います。IT導入は会社の変革を支える、小さな、でも確実な取り組み。これからも、会社やスタッフのために私ができることを探し、実行していきたいと思っています。

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