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BEFORE & AFTER

〈BEFORE〉伝票、顧客管理、すべてが紙に手書き。営業ノウハウも属人化し、顧客情報共有の不備からクレームにつながるケースもあったが、経営状況から新たなツールの導入などの刷新は厳しい状況だった
  • 〈AFTER〉2016年に現代表取締役の神谷さんが事業承継。ITに関する知識を持つ渡口さんと協力し、パソコンを導入、HPを立ち上げ、顧客管理や顧客の新規出店管理にITツールも活用。2022年にはLINE公式アカウントからの個人宅配注文受付・最短30分の配送を那覇市内で実現し、注目を集めている
株式会社リカーショップ新城は、那覇市国際通りの中心部に店舗を構え、飲食店への卸・配達に加え、店頭販売、個人宅配も手がける”町の酒屋さん”。40年余にわたって親しまれてきた「新城洋酒店」を事業承継し、2022年に法人化しました。業務のデジタル化はもちろん、LINEを使用した個人宅配など革新的な取り組みを積極的に進める代表取締役社長・神谷厚仁(かみやあつひと)さんとその右腕である常務取締役の渡口桂輔(とぐちけいすけ)さんにお話を伺いました。

顧客管理のデジタル化で営業ノウハウを蓄積・活用

常務取締役の渡口桂輔さん、代表取締役社長・神谷氏厚仁さん
(左から)常務取締役の渡口桂輔さん、代表取締役社長・神谷厚仁さん

神谷さんが事業を引き継いだ当時、注文窓口は電話のみ。その内容を伝票に手書きする昔ながらのスタイルで、聞き間違いや伝票の紛失、汚損なども起きていました。取引先とのやりとりも社内共有できず属人化。各担当営業しか状況が把握できず、クレームにつながるケースも多かったそうです。

ヒューマンエラーをなくし、顧客情報や営業ノウハウの蓄積・活用を行うために、まず必要なのはデジタル化。1台のパソコンの導入からその一歩が始まりました。

ヒューマンエラーをなくし、顧客情報や営業ノウハウの蓄積・活用を行うために、まず必要なのはデジタル化。1台のパソコンの導入からその一歩が始まりました。

神谷さんは別事業での経験を生かし、外部人材の力を借りつつSEO対策(※1)も含めたウェブサイトの制作・運用を開始。渡口さんも那覇市主催のIT産業人材育成事業に参加して得た知識をもとに、ITツールを調べ、勉強しながら社内の業務を少しずつ変えていったそうです。
中でも大きな取り組みとなったのが、CRM(※2)、SFA(※3)での顧客管理のデジタル化でした。

渡口さん 「弊社は、新規出店の際のサポートとしてお酒のラインナップの提案なども行っていますが、商談、関係構築などのノウハウは属人化しがちでした。 スキルの高いスタッフのノウハウをデータとして蓄積・共有できれば、誰もが学び、実践できます。顧客情報の共有にもなり、同じ質問をするようなミスも避けられます。 2020年の導入からデータが蓄積され、スタッフの検索能力も上がって、活用できる段階になってきました」

渡口さん
「弊社は、新規出店の際のサポートとしてお酒のラインナップの提案なども行っていますが、商談、関係構築などのノウハウは属人化しがちでした。 スキルの高いスタッフのノウハウをデータとして蓄積・共有できれば、誰もが学び、実践できます。顧客情報の共有にもなり、同じ質問をするようなミスも避けられます。 2020年の導入からデータが蓄積され、スタッフの検索能力も上がって、活用できる段階になってきました」

※1
ウェブの検索で上位表示させ、アクセス数を増やすこと
※2 CRM
Customer Relationship Managementの略語で、「顧客関係管理」や「顧客関係性マネジメント」を表す。属性やコンタクトの記録・管理から各顧客と最適なコミュニケーションで関係性を築き、売上・収益性向上につなげることを目指す。
※3 SFA
Sales Force Automationの略語で、「営業支援システム」を表し、商談から受注までの進捗状況を可視化・管理する。営業業務で定型的・繰り返しの多い業務分野を自動化し、有望な見込み顧客へのアプローチ等のコア業務に集中できる環境を整える。CRMを実践するパーツのひとつ

ウェブサイトリニューアル、オンラインショップ運営開始。
ウェブサイトに問い合わせ窓口を設置し、対応の手間とミスを大幅に軽減

事業承継当初に制作したウェブサイトを2022年にリニューアル。狙いは、見やすく使いやすい設計で個人と業務用の注文の入口を分けること、そしてンラインの問い合わせ窓口を追加することです。

神谷さん
「夕方になると、3台ある注文受付用の電話が鳴りっぱなし(笑)。しかも、回線を業務用と個人用に分けていましたが、混在する場合も多かった。また、窓口が電話しかなく、急ぎの用件もそうでないものも電話になってしまうためつながりにくくなり、店内が騒がしくて聞き間違いも多くなってしまいます。急ぎの業務連絡にも支障が出ていました。
そこで、ウェブサイトをリニューアルし、個人用と業務用の電話番号をわかりやすく表示することでスムーズに対応できるようにしました。また、メールの問い合わせフォームも設置しました。急ぎでないものを電話から可能な限りメールに移行したかったんです」

渡口さん
問い合わせフォームの設置で、優先順位を二分できるようになりました。急ぎの問い合わせは電話、そうでないものはフォームで来るようになり、振り分けて考えられるので、対応がかなり楽になりましたね。また、メールなら聞き違いも防げますし、入力の手間も省けます。企業のイベントなどに関するやりとりもFAXからほぼメールに移行でき、確認にかかる時間や読み間違いも格段に減っています

コミュニケーションアプリを使い、個人宅へもスピード配達

2022年7月にリリースし、酒屋のDXとして注目されているのがLINE公式アカウントを使用した宅配注文アプリ。リカーショップ新城のLINE公式アカウントを友達追加することで、約300アイテムの注文が可能なサービス(※3)で、最短30分、90分以内の配達を実現したクイックコマース(※4)です。

個人向け宅配は、コロナ禍以前からお祝い事などのニーズに応えて行っていたサービスでした。しかし、注文窓口は電話のみ。ビール一つとってもメーカー、種類、サイズが豊富なだけに、それを特定するまでのやりとりと時間はユーザーにもお店側にも大きな負担でした。
「アプリやLINEでこのプロセスをどうにかできないか」と探すものの、どれもしっくりこない。そんな折に出会ったのが、LINE公式アカウントをベースにしたマーケティングでした。

神谷さん
EC(Eコマース)のシステムにLINEの機能を組み合わせる、というもの。LINEは多くの人が使うスピード感のあるツールで、私たちが思い描いていたことにジャストフィットしていたんです。のめり込んで進めました」

アプリをゼロから開発するより時間と費用を節約できること、新たなアプリをダウンロードするところからではなく友達追加のみで利用可能な手軽さも大きな後押しになりました。
スピードを何よりも重視し、ECのコンサル経験も持つ開発者が主導して開発期間は実質2カ月に圧縮。超高速リリースにこぎつけました。電話番号やメールアドレスの新規登録を必要としない、画期的な宅配サービスとしても注目を集めています。

※3:2022年11月現在、那覇市内限定
※4:クイックコマース
即配(即時配達)サービス。注文から商品の配達まで数十分以内で行う仕組みを備えたインターネット上の商品売買(Eコマース)サービス

既存サービスがITの力で時代をとらえる存在に

繁華街の中心に立地し、小回りのきくバイクを主力とした配達を行い、市内全域の飲食店をつなぐ配達網と土地勘を持つ。それは地域にしっかりと根差した酒屋であるリカーショップ新城ならではの大きな強みでした。
そこにコミュニケーションンツールであるLINEを活用する宅配注文アプリが組み合わされることにより、“時代に即したサービス❞へ変革されたのです

神谷さん
「車配達の場合は前日受注が基本ですが、弊社は9割がバイク配達で当日受注もあたりまえ。飲食店の配送ルートを回るついでに寄り道する感覚で、大口の注文が少なく利益の出にくい個人宅配にも問題なく対応できるんです」

現在、個配注文は約80%がLINEに移行。それでも、電話窓口は残しています。

渡口さん
「電話での注文の場合、ビール一つにしてもメーカーや種類、サイズを特定するための一問一答クイズみたいなやりとりが必要になることもあるんですが、ご高齢の方や、電話の方が使い勝手が良いと感じる方も一定数おられます。急な注文に応えるためにも、電話をなくすことは現状では考えていません」

アプリ受注がもたらすスピード感と現場への好影響

LINE公式アカウントからの注文を管理するための店舗用アプリも併せて開発。現場のオペレーションに合わせた調整を重ねて、ゼロベースから実装しました。

渡口さん
「管理用画面は見やすく、検索しやすくするにはどうすればいいか相談しながら作成しました。裏側の管理は私が担い、現場は注文が入ったらチェックを入れて伝票を発行し、配達スタッフに渡すだけという状態にしているので、今のところ混乱はないようです」

神谷さん
「導入に際し、果たして社員が対応できるのかという不安はありましたが、渡口がいるから大丈夫、やってくれるだろう、と感じていました。
導入してみて感じたのは、LINEのスピード感で現場のやる気がアップしていることリリースから2カ月で友達1000人も達成できました。収益化の面ではまだまだで広告や運用の費用も大きいですが、3年後、5年後に『やっていて良かった』と思えるサービスだと信じています」

渡口さんは、アプリ導入の効果をこのように語ります。
「アプリでは商品の銘柄・価格を画像で提示できるので、希望商品の特定に時間がかからなくなった点が最も大きな変化です。電話の場合1点の商品に10分~15分を要することもしばしばあり、本当に大変でした。
商品取扱の有無、価格についての問合せなども大幅に減少し、問い合わせがあった際にもアプリへ誘導し友達追加・注文していただく流れができています。
飲食店やアプリ経由の注文も日々増加しているので正直なところ大幅に時間が浮いたという実感はありませんが、対応できる1日当たりの事務作業などは増えています

双方向のコミュニケーションが大きなメリットに

神谷さん
「10月からは唐揚げ専門店とのコラボ商品も販売しています。今後さらに地域の店舗との連携を進めて、ラインナップも充実させていきたいです。
そして個人宅配をもっとサービスとして地域に浸透させられたら、紙ベースの配達指示もデジタル化したいですね。電子帳簿保存法(※5)への対応も必要なので、配達スタッフに位置情報を入れたスマートフォンを支給して、アップグレードしたいです。現在は那覇市のみですが、近隣市町村、宮古島、石垣島までカバーしたいと思っています。

現在は紙ベースの配達伝票もデジタル化を検討
現在は紙ベースの配達伝票もデジタル化を検討

それが実現したら、一人暮らしのご高齢の方の安否確認にも役立てたい。40年以上地域に寄り添ってきた弊社の社員が行うことで、安全面の信頼も得られやすいのでは、と思っています」

町の小さな酒屋さんが、町の小さなお店の商品を配達することで販路を広げる。培った信頼をベースに高齢者の見守りを行う。今後の地域のあり方、地域経済のあり方にもポジティブな変化をもたらす大きな一歩になりそうです。

渡口さんは観光需要が戻りつつある状況を見据え、飲食店など業務用の注文をウェブサイトやLINEで受けられる仕組みを作りたいと考えています。

渡口さん
「コロナ以前、社員旅行シーズンの10月・11月は、バス移動中の飲食需要も多かったんです。旅行代理店からの依頼で半日~1日那覇空港のバスプールに張り付き、氷やビール、ソフトドリンクなどを積み込んでいました。ウェブで注文できる仕組みを作れば、そういった需要ももっと掘り起こせるかもしれません」

神谷さん
「私たちの進めているデジタル化が業界としての正解になるかどうかはわかりませんが、LINEからの注文・決済でスピーディーに指定の場所へ配達できる仕組みは、確実に消費拡大につながる個人消費だけなく、イベントなどの需要も掘り起こせると思っています。」

デジタルやITを駆使したシステムを、無機質なものでなく、人と人をつなぐものとして温かなサービスへと育てているリカーショップ新城。その取り組みは、業界全体のデジタル化を促す一歩になるかもしれません。

※5 電子帳簿保存法
2022年1月1日に改正。国税関係帳簿書類の保存にかかる負担軽減のため、原則書面保存だったものを電子データで保存することを認める。経理処理のデジタル化、業務DXを促す
会社名 株式会社リカーショップ新城
代表 代表取締役 神谷厚仁(かみや あつひと)
住所 沖縄県那覇市牧志3-11-14 1F
事業内容 酒類卸・小売業
従業員数 21名(役員3名、正社員5名、パート・アルバイト13名)
平均年齢 37歳
HP 那覇市の頼れる酒屋さん「リカーショップ新城」

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