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2022年5月15日、本土復帰50周年の節目を迎えた沖縄県。ResorTech Okinawaでは、沖縄の未来を見据え、先進的な取り組みを行う県内企業のトップに、これまでの50年を振り返り、そしてこれからの50年を語っていただいた。

第一弾は、復帰前にルーツを持ち、県民のソウルフードともいえる沖縄天ぷらで愛される「上間弁当天ぷら店」を展開する上間フードアンドライフ。会長・上間喜壽(うえまよしかず)氏と代表取締役社長・上間園子(うえまそのこ)氏の初のクロストーク。沖縄の飲食業界を牽引する若き経営者お二人の対談をお届けする。

大失敗と人とのご縁から生まれた
「ファミマでUEMA」

販売開始直後から大反響を呼び、今ではすっかりおなじみの光景となった、沖縄ファミリーマートのレジ横に並ぶ上間天ぷら。「ファミマでUEMA」の始まりは、1100万円にのぼる損失と、何とも沖縄らしい人とのご縁だったという。

損失1100万円からの大逆転

園子氏: 沖縄ファミリーマートさんとの業務提携は、そもそも大失敗からの始まりでした。

旧暦1月16日(ジュウルクニチー:※1)には、例年法事用の折詰1万5000個ほどの注文が来ます。そのすべてを当日作るとスタッフの負担も生産キャパも明らかにオーバーしてしまうので、巻寿司やいなりを事前に作れるよう凍結機を導入したんですが、これが全く機能しませんでした。そのためお客様からのクレームが発生し、約600万円を返金しなければならなくなったんです。

約500万円で購入した凍結機はただの鉄の塊、返金分と合わせて1,100万円の損失です。「どうしよう!」となった時、ならば天ぷらを凍結してみようと考えたのがきっかけでした。

喜壽氏: その頃お会いする機会のあったりうぼうの糸数会長に「天ぷらっていいですよね」と言っていただき、「今度一緒にやりませんか」とお声かけしたんです。雑談のようなやりとりだったんですが、商品開発担当者につないで下さり、その方が地元の先輩の知り合いで、というご縁もあって。「おもしろいから、とりあえず実験的にやってみましょう」となったんです。

園子氏:直営5店舗から始まりましたね。

喜壽氏:これがめちゃくちゃ売れて、俄然勢いづきました。そこまでうまくいくと思っていなかったんですが、気がつけば新規事業並の売上でした。

園子氏:損失をどうにか回収したい気持ちからの発想で、本当に「ピンチはチャンス」でした。

困難な状況は成長の好機でもある

園子氏:爆発的に売れたこともいい経験でしたね。天ぷらが1日200個×300店舗、6万個売れたんです。誰も予想しなかった売れ行きで、1カ月分の在庫が1週間でなくなってしまった。

喜壽氏:想定の4倍~5倍売れちゃった。現場はもう必死で、当時部門管理をしていた彼女も倒れる寸前でした。

園子氏:はい、初めて死の淵を見ました。

喜壽氏:こういう機会は、今までのやり方では通用しないことをどうすればできるようになるか、必死で考える機会になるんです。ストレスフルで簡単ではない状況だからこそ、今までにない発想が生まれ、なりふりかまわず何でもやれる。その結果、組織としての品質、限界を超える機会になるんですよね。

いつもそういう感じだよね、成長する時は。

園子氏:そうですね。結果、沖縄天ぷらというブランドを確立できましたね。

喜壽氏:沖縄ファミリーマートさんには本当に感謝しています。例えるなら高校球児がプロ野球に入る時のような県民の応援もとても感じましたし、ローカルの「知る人ぞ知る」沖縄天ぷらが、幅広く受け入れられるきっかけになった大きな出来事だと思っています。

※1 旧暦1月16日(ジュウルクニチー):あの世(後生/グソー)にいるご先祖様のお正月。前年に亡くなった方(新仏/ミーサー)のいる家では特に大切に執り行われる行事。

 


#2(クロストーク動画)ピンチをチャンスに 限界を大きく超えて成長

 

110人の総務経理をデジタル化、1.5人で支える

「ファミマでUEMA」のみならず事業は多角化、店舗展開も進んでいる。増え続けるスタッフに対し、総務経理は継承初期と同じマンパワー。それを可能にするのはやはりデジタル化だった。

園子氏:指示書のシステム化で3、4時間の作業が10秒で済むようになりましたし(#1「上間流 経営改革とDX」変わらないものと変わったもの、デジタル化への第一歩)、その他にも効率化は進んでいますが、店舗展開等もありスタッフは今後も増えていきます。

デジタル化による省人化が顕著なのは経理総務。売上は8億円規模ですが(2022年4月現在)、売上2億円規模だった初期から1.5人で支えています。

喜壽氏:給与計算、コールセンター業務、社会保険周り、その他こまごまとした事務作業を1.5人で回しているんです。

園子氏:スタッフ約110人分ですね。デジタル化は外部向けというより社内の効率化に大きく役立っています。これからも必要不可欠なものですね。

2026年のビジョンに向けて

2021年、「5年後(2026年)に県内30店舗展開、マザーズ上場(※2022年4月の再編によりグロースへ移行)」を目標に掲げた上間フードアンドライフ。会社を支えるインフラとして「合理性を考えればITやDXは当然必要な手段」としながら、さらなる事業展開のために必要と考えるもの、そして人とは。

情報共有と意思決定のスピードを上げる

喜壽氏:組織的なスピードは重要ですね。

今後目指す規模の運営を行うための各部門、必要な機能も揃える必要があります。

組織は誰か一人ではなくメンバーで動かすもの。一人が遅れると全員遅れるんです。そうしたボトルネックを解消するためには、全体のつながりをスムーズにして、情報共有と意思決定を早くしなければならないですね。

経営者がどれだけ早く意思決定するか。その判断に必要なデータをどれだけ正確に、早く集められるか。そして、その意思決定を早く組織に伝えて実行させるためにはどうすればいいか。

規模が大きくなればその効率は落ちてくるので、そこで更なるデジタルの活用なども想定しています。

時代の要請に応じ、変わり続ける

喜壽氏:高度経済成長期や戦後、本土復帰頃は、5年、10年と同じ流れが続くのが当たり前でしたが、現代は変化が非常に早く、波も大きくなっています。

壊れかけたところが多かった会社を継いで、思いきり大手術して変えることができたのは本当に良かったと思っています。軌道に乗れたのは、その時期の経営変革がきいているからだと感じていますね。

今後も社会変化はより大きく続いていくと思うので、会社のカルチャーとして定義したいことは、変わり続けること。どこかで天ぷらをやめてもいい(笑)。

天ぷらはあくまで「食を通して沖縄の文化を守り、伝え、発展させる」という弊社の理念を実現する手段なんです。

私たちは文化の相を重ねるということをとても意識しています。がんばって残していくのではなく、その地域の風土や環境に自然に適応できたものが残っていく。

時代が求めるものに対応していくことが、結果文化になると考えています。

顧客を理解し、寄り添い続ける

喜壽氏:ゴーヤーが自然に育ち、ポークは基地から広がったから、ゴーヤーチャンプルーを作る。高温多湿だから、乳脂肪分の多いソフトクリームより氷菓子が売れる。そういった人間の欲求や環境に準じる方が適切で、それが顧客に応えることだと思います。

沖縄という場所、そこで生活する人々の考え方、生き方をきちんと理解しなければならない。「天ぷらをやめてもいい」というのは、押し付けないということです。

園子氏:お客様の数や売上は私たちへの評価で、それが下がるのは提供価値が良くないという意味。時代に合わせて変えていく必要があると思いますね。

喜壽氏:人間は便利だから、楽だから、楽しいから使う。消費者として、誰もが意識せずにやっていることです。便利だと感じたものは「使ってみて」と周りにすすめますよね。そういった、生活の中の合理性や感情を理解しなければならない。

昔ながらのものも、現代の生活に合わなければ変えてもいいと思いますし、逆に変える必要のない価値あるものに関しては、わざわざモダンに仕立てることもありません。

顧客を理解するということは、顧客に寄り添った価値を提供し続けることだと思っています。

求めているのは、デジタルで作り上げたシステムを活用し、さらなる価値を生み出せる人材

園子氏:人材確保も重要ですね。社内のデジタル化は進んでいるので、そのシステム、仕組みやマニュアルを使いこなし、自分で考えてお店づくりができる人材がほしいです。

喜壽氏:それなりの能力があれば店舗は仕組みで回ります。決まったスケジュールを処理するだけで一定のクオリティーを保てるんですね。

ただ、会社の利益を生み、地域のお客様にも愛される良い店づくりを進めるとなると、思考力と感性の両方が必要です。

園子氏:社員で店長だった人がフランチャイズとして独立すると、それまで何とも思わなかったドアの汚れが気になるようになる、という話があります。どれだけお客様目線に立って、自分のお店だと意識し、スタッフ皆の生活を豊かにしよう、という目線を持てるかということですね。

喜壽氏:ベースとなる既存のシステムをうまく使い、成果と弊社の目指すゴールを理解しつつ、やりたいこと、表現したいことも持ち込める人材がほしいですね。

採用の際は「理念に共感できるか」「やりたいことは何か」を聞くのにかなり時間を使います。なので、全然人を採用できません(笑)。

園子氏:入ってきても続かないというか。

喜壽氏: 続いても、熱が足りないんです。デジタル化された仕組みや上間天ぷらというブランドの支えはあれど、やはり人によるところは非常に大きい。職務はもちろん、弊社のカルチャー、組織風土への適性で、良い悪いではなく相性の問題だと思っています。求めるのは、顧客を満足させること、スタッフを満足させることの二つ。その方法は無限ですね。

デジタルを活用して会社組織の土台ができている分、その土台の上でどういう表現ができるかを求めたいのが率直なところです。

【PROFILE】
上間喜壽(うえま・よしかず)
株式会社上間フードアンドライフ代表取締役会長
U&I株式会社代表取締役社長
SCOM株式会社取締役
1985年沖縄県うるま市生まれ。法政大学経営学部卒業後、2億円の負債を抱え財務トラブルに陥った家業の立て直しのため代表に就任。就任後9年で売上を1億円から6億円に成長させ、お弁当を軸に、ケータリング、沖縄そば等事業多角化を推進。
U&I株式会社では、事業立て直しの経験から得た実践的なノウハウを、セミナー活動やマネジメントコンサルティングを通じ経営者に伝えている。沖縄の中小零細企業から大企業まで、経営戦略、マーケティング、会計、財務、ITシステム等を用いてクライアントの経営課題解決を支援する。「沖縄の企業活動を変えていく」というミッションを達成するために日々奮闘中。
上間園子(うえま・そのこ)
株式会社上間フードアンドライフ社長
U&I株式会社取締役
1986年沖縄県うるま市生まれ。東京の会計専門学校に入学するも、一年で資格を全て取得したため中退。沖縄に戻り、家業の上間弁当天ぷら店に入社、法人化により、22歳で株式会社上間フードアンドライフ副社長に就任。現場執行役員として8店舗展開のチームリーダーを担った。2019年、沖縄ファミリーマートでの天ぷら商品化に携わりプロジェクトリーダーを務め、2021年、社長に就任。
さらに続くお二人のお話は#3(強いリーダーシップで50年後の未来を語れる沖縄に)でお届け。今後50年の未来に向け、沖縄の持つポテンシャル、情報産業が果たすべき役割について伺った。沖縄の持つ可能性はとても大きいとしながらも、「このままでは潤うのは外資と県外企業だけ」と語る喜壽氏が考える、豊かな50年を築くために必要なものとは?ヒントは「サーフィン」。

 

年配のスタッフも多く働く上間天ぷらの現場でデジタルはどのように導入されていったのか。そして、集めたデータは蛇口の破損も教えてくれる?デジタル活用のヒントがいっぱいの#1(「上間流 経営改革とDX」変わらないものと変わったもの、デジタル化への第一歩)もぜひご覧ください。

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