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「補助金を利用したいけど、手続が難しそう」「デジタル化は必要と感じるけど、たくさんありすぎて何を選べばいいかわからない…」そんなあなたに、ぜひご覧いただきたいと思います。
2024年3月6日、令和5年度開催された補助金活用セミナー。
沖縄県内の事業者を対象に、小規模事業者等デジタル化支援事業(沖縄県商工労働部中小企業支援課事業、以下、デジタル化支援事業 ※)事務局による補助金活用方法紹介や、デジタル化支援事業を活用して生産性向上を実現した4社の成果事例発表などが行われました。
こちらの記事では、成果事例発表の内容を中心に、補助金活用やデジタル化に取り組む際に役立つポイントをお伝えします。
県内事業者がデジタルツールやデジタル化支援事業をどのように活用しているのか、まずは知るところから始めませんか。
※小規模事業者等デジタル化支援事業
沖縄県商工労働部中小企業支援課による、沖縄県内の小規模事業者などの労働生産性向上のため、業務のデジタル化を促進する取り組みを支援する事業。
ITツール導入経費や活用支援を受けるための経費などに対し、従業員数20名以下の場合補助上限額50万円(補助率3/4)、従業員数21名以上の場合補助上限額100万円(補助率2/3)までを補助。さらに、専門家によるITツール選定・活用サポートも無料で受けられる。令和5年度事務局は沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)。

デジタル化はDXという高みへの第一歩

ISCO産業DXセクションのシニアプロジェクトマネージャー、成井さん

セミナーは、ISCO産業DXセクションのシニアプロジェクトマネージャー、成井悟(なるいさとる)さんによる開会の挨拶でスタートしました。
週休二日や年末年始休の実現など、従業員の待遇改善を目指してデジタル化に踏み出す企業が多いことを「とても沖縄らしい」と感じているという成井さん。DXを登山に例え、「業務のデジタル化を始めることで三合目まで登れる。そうすると見えてこなかった景色が見えてくる。それを頼りに五合目まで行くと、デジタルがデータで語りかけてくる。データを活用することで、経験・勘・根性に頼っていた経営が少しずつ変わっていく」と、まずは業務のデジタル化から取り組めば、DXという高みにたどり着ける、そのために補助金を上手に活用してほしい、と話しました。

事業担当者がデータから語る、沖縄のIT活用の傾向とスベらないための注意点

続いて、ISCO産業DXセクションのプロジェクトマネージャー、小規模事業者等デジタル化支援事業運営事務局の屋良朝法(やらとものり)さんが登壇。デジタル化支援事業の成果や特徴、活用の際の注意点をデータと経験から語りました。

小規模事業者等デジタル化支援事業運営事務局の屋良さん
小規模事業者等デジタル化支援事業運営事務局の屋良さん

◆小規模事業者等デジタル化支援事業の紹介と今年度の成果

・今年度の事業採択件数:70件
・交付額見込:約2,847万円
・活用している事業者の60%以上が従業員15名以下の事業者
・石垣島や宮古島での活用も多い
・伊平屋島や南大東島でもツール選定支援が行われている
・専門家によるツール選定支援は利用した事業者の約80%が「とても良かった」と評価

◆IT利活用アンケートから見える沖縄県のデジタル化状況

※専門家によるITツール選定支援や補助金申込の際に回答が義務付けられている「IT利活用アンケート」の分析から、下記のような傾向が明らかになっています。
・会計・経理分野のIT導入について意欲率・導入率がともに高い
IT導入率の高いグループは労働生産性が高い(156事業者を3年間の労働生産性平均で比較)。特に販売やマーケティングといった顧客対応の部分で顕著
・業種により導入しているITツールにも傾向があり、選定の際の参考になる
・IT人材育成に関して多くの事業者が苦慮。45.5%の事業者が「時間的余裕がない」と答えるなど、教育内容や方法、教育者の不足、時間・資金の捻出において大きな課題があり、昨年よりも悪化している

◆スベらないためにこれが必要!

業務の流れを把握し、実現したいこと、必要な機能を明確にして整理することが大切
・1社ではなく複数社から見積・提案を受け、内容を吟味すること
・業務改善アプリは自社のプロセスに合わせたものを作るにはIT企業のサポートが必須
クラウドサービスはアップデートでレガシー化せず、DXへつながっていくものも多い。ランニングコストを理由に敬遠しないで積極的に使ってみよう

デジタル化支援事業は、名称が示すとおり、小規模事業者に寄り添い、活用しやすい事業であり、沖縄本島のみならず離島の事業者も活用可能です。
また、「IT導入率の高いグループは労働生産性が高い」ということがアンケート結果からも明らかになっており、ツールの活用は業務効率化・労働生産性向上に大きな力となることが示されています。
「どんなツールを使えばいいかわからない」「必要なツールはわかっているが、種類が多くて何を選べばいいのかわからない」といった困りごとにも、デジタル化支援事業はツール選定支援でサポートしてくれます。様々なツールの中から自社に合ったものを探すためにも、自社の課題をより効果的に解決してくれるツールに巡り合うためにも、まずは相談してみるのがおすすめです。

令和5年度、補助金を活用した事業者による成果事例発表

AI議事録作成ツールでカルテ作成時間が1/12に!
【OPENER Management(オープナーマネジメント)株式会社】

BEFORE & AFTER

1人あたり30分のカウンセリングデータからカルテを作成するのに平均3時間。30人規模の企業でもカルテ作成だけで90時間が必要となり、人手不足の中で新規案件を獲得することもできない
  • デジタル化支援事業の補助金を活用してAI議事録作成ツールを導入、1人分のカルテ作成時間が 3時間→15分に激減
  • データ分析の充実・クラウド化にも取り組む
OPENER Management株式会社の六本木佳代子(ろっぽんぎかよこ)さん
OPENER Management株式会社の六本木佳代子(ろっぽんぎかよこ)さん

IT技術者出身、複数企業の経営を経験してきた六本木さんが、デジタル活用と経営者の視点から「メンタル不調者の多いIT企業でどんなメンタルケアをすべきか」を学んだことをきっかけに生まれたOPENER Management(オープナーマネジメント)株式会社。デジタルで人の心を数値化してメンタルケアを行う仕組みを構築し、中小企業の経営者について回る「人」の課題に寄り添い、サポートしています。

六本木さんが最大の課題と感じていたのは、カウンセリングデータをカルテに起こす時間と手間。これを、デジタル化支援事業の補助金を使用して導入したAI議事録作成ツールで解決します。
85~90%ほどの精度で音声データの文字起こし、要約まで自動化できたことで、3時間の作業が15分にまで短縮されました。30人規模の企業の場合90時間必要だったところを1/12の7.5時間で終えることができるようになる計算です。
六本木さんは、効率化で得られた時間はデータ分析の充実などに充て、さらにIT技術を活用して顧客へのフィードバックをより良く簡単にしていきたい、沖縄企業の助けになりたい、と締めくくりました。

ツール選定支援でより効果的な受注・倉庫管理システム導入
【EF Polymer(イーエフポリマー)株式会社】

BEFORE & AFTER

ECサイトや電話、メールからの注文をExcelに転記し、委託倉庫へ発送指示を行う。転記や確認に時間がかかり、ヒューマンエラーは頻発、在庫確認には1週間が必要だった。社内にIT人材がおらずITツール選定・ツールどうしの連携にも苦慮
  • デジタル化支援事業のツール選定支援により受注・倉庫管理一体型のシステムを導入。ECサイト経由の受注から委託倉庫への発送指示までが自動化
  • 2、3日かかる場合もあった発送指示が早ければ5分、1週間かかっていた在庫確認は1時間で終わる作業に
EF Polymer株式会社の小谷 恵里子(こたにえりこ)さん
EF Polymer株式会社の小谷 恵里子(こたにえりこ)さん

1年で土に還るオーガニック超吸水性ポリマーを製造する、インド生まれ・沖縄育ちのスタートアップ、EF Polymer(イーエフポリマー)株式会社。Excel入力で管理する受注や委託倉庫への出荷依頼作業の非効率性が課題でした。ヒューマンエラーも頻発し、商品の着払いでの返送といったことも起きていたそうです。

ITや物流に詳しい人材がいない中でもリサーチを進め、受注・在庫管理システム(OMS)と倉庫管理システム(WMS)の導入を模索していた小谷さん。システム間やECサイトとの連携がうまくいかず苦慮していた折、ツール選定支援を知ってデジタル化支援事業に申し込みを行います。事務局のヒアリングや提案を受け、OMS・WMS個別ではなく一体型のシステムを導入。ECサイト経由の受注から出荷依頼までが自動化され、発送指示は2、3日から早ければ5分へ、在庫確認は1週間から1時間へ大幅に短縮できたそうです。
在庫数や売上数をシステム上いつでも確認可能なため、経営判断、戦略策定もスピーディーに。水不足に悩む人々を救いたい、という思いから誕生したオーガニック超吸水性ポリマーは、ITによる効率化を土台に販売機会を拡大しつつあります。

HP上に24時間対応可能なコンシェルジュが誕生
【株式会社ケヤキコーポレーション】

BEFORE & AFTER

アフターコロナで増加した問合せの電話やメールへの対応に時間を割かれる。早朝や深夜の問合せに迅速に対応できない
  • デジタル化支援事業のツール選定支援を活用。4か国語対応のチャットボットの導入により、問合せメールは19.6%、電話は9.7%減少
  • 営業戦略・マーケティング会議は週3時間増
株式会社ケヤキコーポレーションの佐藤真奈美(さとうまなみ)さん
株式会社ケヤキコーポレーションの佐藤真奈美(さとうまなみ)さん

株式会社ケヤキコーポレーションは、北谷町、読谷村でコンドミニアムタイプのホテル経営を行っています。旅行需要回復にともない、電話やメールによる問合せ件数が増加。問合せや予約は日中より夜間に入る場合が多く、対応に追われていたそうです。

北谷町観光協会を通してデジタル化支援事業を知り、ツール選定支援を活用。ヒアリングを経て、事務局から提案を受けたChatGPT連携の4カ国語対応AIチャットボット導入に至ります。その結果、問合せメールは19.6%、電話は9.7%減少。営業会議は週3時間増。HP上にコンシェルジュが24時間常駐し、いつでも疑問や懸念点を解消できる状況を作ることで、安心感から予約増につながったうえ、顧客満足度を上げる活動に時間を割けるようになりました。
ツール選定はもちろん、IT企業との打合せへの同席、申請・実績報告のプロセスサポートなど、「事務局の丁寧な対応に助けられた」と話した佐藤さん。中部保健所管内初のデジタルチェックイン導入を行うなどDXに積極的に取り組んでおり、今後もさらなる進化を見せてくれそうです。

キャリア人材の採用にもつながったデジタル化
【琉球警備保障株式会社】

BEFORE & AFTER

属人的な業務と経験者の減少による新人教育や業務の引継ぎが長年の課題。警備員への支給品管理、教育管理、公安委員会提出用の書類作成にも手間取っていた
  • デジタル化支援事業を活用し、遠隔臨場システム導入により、熟練者の指導を受けつつ業務に従事できる体制を構築
  • 支給品管理、教育管理、公安委員会提出用の書類作成も業務改善ノーコードアプリでほぼ自動化
琉球警備保障株式会社の城間剛(しろまたけし)さん
琉球警備保障株式会社の城間剛(しろまたけし)さん

県民の安全を守り続け、2024年に創業50周年を迎えた琉球警備保障株式会社。慢性的な人手不足、属人的な業務と経験者減少による新人教育や業務引継ぎに課題を抱えていました。社内で遠隔臨場システムを選定、導入のために補助金を活用しようと事務局を訪れ、相談を行う過程で、それまでは気づけなかった警備員への支給品在庫管理や教育管理、公安委員会提出用の書類作成といった潜在的な課題が明確化。さらに、「業務改善ノーコードアプリが効果的」と、解決への道筋も見えたそうです。

今回導入した遠隔臨場システムは、本部の熟練警備員の指示のもとで業務に当たる体制を実現。未経験者の心理負担軽減、警備品質向上に効果を発揮しています。業務改善ノーコードアプリは、期待通り教育時間の可視化を始め、支給品在庫管理、公安委員会提出用書類作成の自動化も実現。
一連の取り組みにより、大学院卒業後専門的なキャリアを積んだ人材との縁が生まれ、採用が決まった、と笑顔を見せた城間さん。DXロードマップも策定し、全社的なITリテラシー向上、動画データを使った新人教育、新規事業創出などに向け、歩みを進めていくと語りました。

セミナー動画や事例集も参考に、デジタル化への一歩を踏み出そう

リアル会場34名、オンライン81名、計115名が参加し、盛況のうちに幕を閉じたセミナー。こちらの記事では概要のみをお伝えしましたが、あなたの会社の抱える課題解決やデジタル導入の後押し、ヒントとなれば幸いです。

成果事例を発表した4社のうち3社がツール選定支援を申し込み、「どのツールを選ぶべきか」の答えに最短ルートでたどり着いたほか、潜在的な課題の明確化・解決にもつながったケースもありました。こうした段階からでも、まずは事務局への相談を行ってみるのも大きな変化のきっかけになると思います。
セミナーは動画で視聴可能です。こちらからご覧ください(視聴には氏名やメールアドレスなどの登録が必要です)。
デジタル化支援事業を実際に利用した事業者の事例をもっと知りたい!という方には、成果事例集がおすすめです。

ResorTech Okinawa Webサイトでも、デジタル化支援事業を利用して業務効率化・生産性向上を実現した事例を多数掲載しています。こちらからご覧ください。
デジタル化支援事業以外にも様々な支援メニューがあります。こちらから、あなたに合った支援情報を探してみてください。
「業務のデジタル化から取り組めば、DXという高みにたどり着ける」。DXにつながる小さな、大切な取り組みに、今日から一歩踏み出してみませんか。

小規模事業者・中小企業が活用できる補助金情報まとめ

IT導入補助金
中小企業等の生産性向上を図るためのITツール導入を支援

小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路拡大や経営基化を支援​
商工会議所の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等
商工会の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等

ものづくり補助金
中小企業等のものづくり能力の向上を支援

事業再構築補助金
コロナ禍等で影響を受けた企業の挑戦を支援

人材開発支援助成金
従業員への職業訓練等を計画に沿って実施、訓練経費や賃金の一部等を助成

沖縄DX促進支援事業
企業の DX に向けた取組を相談窓口、セミナー・相談会の開催、DX推進計画の策定支援、IT企業とのマッチング支援、上限1000万円、9割補助の補助金により段階的に支援。
※次年度公募開始予定は4月後半~5月末頃。マッチングサイトIndustlink(インダストリンク)には昨年の公募要領や採択事業者の情報が掲載されています。今からチェックして次年度応募に備えてみては。

※2024年3月現在の情報

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